1-3 自家受精と純系


 エンドウの花は、放置しておくと一つの花の中で、雄しべの花粉が同じ花の雌しべについて受精が起きる構造になっている。 このように、一つの花の中で起きる受精を 自家受精 という。 エンドウはこの性質を持っているために、人工受粉させなくても次代の種子ができるので、数を必要とする遺伝実験には都合がよい。

 注)1つの花に雄しべと雌しべがあっても、自家受精しない植物は多い。そのような花には、自分の花粉が雌しべについても花 粉管が伸びなかったり、花粉管が伸びても受精しなかったりす る性質(自家不和合性)がある。自家不和合性は本来、生物に とって有利なものである。

 種子が丸形のものをまいて、自家受精させても、できる種子はすべて丸形とは限ら ず、しわ形のものが混じることがある。しわ形がでるときの親は雑種であり、このよ うな系統を用いて実験をしても結果は一定とならず、遺伝の実験には適さない。  そこで、メンデルは遺伝の実験をおこなう前に、自家受精を繰り返し、何代自家受 精させても、対立形質のうち一方の形質しか生じない系統すなわち 純系 を作った。

 注)純系は不用なものを次々に放棄する方法で作られる。品種改良では一般によく行われる方法である。しかし、何代も交配を続ける必要があり、時間がかかる。


[研究1]自家不和合性は生物にとって、どんな有利な点があるか考えてみよう。
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