1-7 遺伝子・対立遺伝子
まず、親から子へ受け渡されるものとして、 遺伝子 (gene)を仮定し、アルファ
ベットの文字を使って記号で表す。( 遺伝子記号 という。例 A,B,a,b)
注)「遺伝子」gene(独語Gen)という言葉はメンデルは用いず、後にヨハンゼンがはじめて使った。
顕性形質を示す遺伝子を 顕性遺伝子 といい、アルファベット大文字で書き始める 記号を用いる。潜性形質に対応し顕性形質がないことを示す遺伝子を 潜性遺伝子 と
いい、アルファベットの小文字で表わす記号を用いる。この2つの遺伝子は対立形質
に対応するもので 対立遺伝子※ という。
例 顕性遺伝子 A,B,C,D,Dy,Cy
潜性遺伝子 a,b,c,d,dy,cy
対立遺伝子 Aとa,Bとb,Cyとcy
注)遺伝子記号には形質にちなんだアルファベットが用いられるが、アルファベ
ットは26文字しかないので、2文字,3文字で表される遺伝子もある。
<エンドウの種子の形に関する遺伝子を考える>
種子の形を丸形にする遺伝子 R があると考える。遺伝子 R があると種子の形は丸形となる。遺伝子 R がないと種子の形は丸くならず、結果的にしわ形になる
遺伝子 R がないということを示す記号を r で示して遺伝子 r があると考えた方がよい。遺伝子 r は「しわ形」に対応しているが、遺伝子 r
があればしわ形になるとは限らないことに注意。
※ここでいう「対立遺伝子」は、現在では「アレルallele」と呼ばれている。遺伝子は染色体に存在し、その位置を「遺伝子座」という。メンデル遺伝学では同じ遺伝子座にAとaの2つの遺伝子があると考えたが、実際には遺伝子はDNAであり塩基配列で規定されている。Aとaのように単純に2つのタイプが対になっていると考えるより、いろいろなタイプが存在すると見た方がよい。そこで、「対立遺伝子」と呼ぶのは適当でないということになった。そこで、同じ遺伝子座に存在する遺伝子をアレルと呼ぶことになった。残念ながら、alleleの適当な訳語がなくカタカナでアレルとなっている。
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