4-2 複対立遺伝子・ABO式血液型の遺伝


 今まで取り扱ってきた1遺伝子雑種の場合、Aとaのように対立する遺伝子は1対であった。ところが、 3つ以上の遺伝子が同じ遺伝子座(遺伝子の位置)に存在する場合がある。これを複対立遺伝子と呼び、 ヒトのABO式血液型の遺伝などの例がある。

例 ヒトのABO式血液型の遺伝
   ABO式血液型を決定する遺伝子にはA、B、Oの3種類がある。これらは複対立遺伝子で、 AとBはどちらもOに対し顕性で、AとBの間には顕性−潜性の関係がない。A型とB型には2つの遺伝子型がある。  A,Bともに無い場合(OO)はO型に、AとBが同時に存在する場合(AB)はAB型になる。
 遺伝子型   表現型 
 AA AO   A型 
 BB BO   B型 
 AB   AB型 
 OO   O型 
 このほかに、アサガオの葉の形、ミドリシジミ(チョウの一種)の斑紋の遺伝など の例が知られている。
※複対立遺伝子は特殊なものではない。遺伝子がDNAでその塩基配列が遺伝情報であることが分かり、塩基配列が少し異なったいろいろな変異があることがあることも分かってきた。

※ABO式血液型は、1900年にオーストリア・ハンガリーのカール・ラントシュタイナー(Karl Landsteiner, 1868 - 1943)によって発見された。血液型の違いは、赤血球の表面にある表面抗原の違いによるものである。A抗原のみがあるとA型、B抗原のみがあるとB型、A抗原とB抗原の両方があるとAB型、両抗原が無いとO型となる。

※ABO式血液型の遺伝は、最初は2組の遺伝子(2遺伝子雑種)できまると考えられていたが、1925年に日本の古畑種基・市田賢吉・岸孝義によってA,B,Oの複対立遺伝子によって決まるという説が提唱された。

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