解説
伴性遺伝と連鎖が組み合わさった、やや難しい問題である。
1.まず、家系図の男性の遺伝子型を決定する。
問題文の例にあるように、ここでは、X染色体を と表すことにする。また、Y染色体は で表す。男性はXYでX染色体は1本しかないので、表現型と遺伝子型は完全 に一致する。つまり、色盲でも血友病でもない人の遺伝子型は++( )であり、色盲の男性の遺伝子型はc+( )、色盲で血友病の男性の遺伝子型はch( )となる。したがって、下図のようになる。
次に、女性の遺伝子型を考える。女性はX染色体を2本持っているので、
表現型からだけでは、遺伝子型が決定できないことが多い。劣性形質が現れる場
合に限って遺伝子型が確定できる。しかし、子や親の遺伝子型から、推定するこ
ともできる。
女性dの遺伝子型を考える
女性dの遺伝子型は子や親の遺伝子型から決定できる。その子である男子
fや男子hに色盲と血友病の両方が出ているので、色盲遺伝子cと血友病遺伝子
hの両方を持っていることがわかる。(男子は父親からY染色体を受け継ぐので
、X染色体は母親から受け継いだものしかない。)
また、父親bは、++であるので、女性dは++のX染色体を必ず受け継
いでいる。以上のことから、女性dの遺伝子型は
と決定できる。
女性iとjの遺伝子型を考える
女性iとjの遺伝子型について考えると、両方とも父親cから c+ をも
つX染色体を受け継いでいる。もう一本のX染色体は、母親dから受け継いだも
のである。母親dの遺伝子型は ch/++ であるが、卵形成の時にくみかえが
起こり、卵にはもともとの遺伝子の組み合わせである ch と ++ 、くみかえ
によってできる c+ と +h も生じる。このときのくみかえ率が10%であるの
で、++:+h:c+:ch=9:1:1:9になる。
女性iは父親から受け継いだ c+ を持っているのに、色盲になっていな
いから、母親からは ++ か +h を受け継いだことになる。確率的には ++
が 90%、 +h が10%である。
女性jは父親から受け継いだ c+ を持っていて、色盲になっているから
、母親からは c+ か ch を受け継いだことになる。確率的には c+ が 1
0%、 ch が90%である。
以上の結果から、家系図からわかる遺伝子型は次のようになる。ここで、赤の□は遺伝子が決定できない(+かh)ことを示している。
女性jと正常男子の間にできる子の遺伝子型を考える
女性jの遺伝子型は確定できないが、c+/ch
が 90%、c+/c+ が10%であると考えられる。
正常の男子の遺伝子型は、である。
血友病の遺伝子hは、c+/chの場合しかないので、女性jと正常男子のあいだに血友病の男子が生まれるためには、女性jがc+/chである必要がある(確率0.9)。この女性が配偶子(卵)を作ると、c+とchが半数ずつできる。つまり、hをもつ配偶子ができる確率は0.9×0.5になる。
男子の方は、X精子とY精子が半数ずつできるので、子が男子になる確率はY精子が受精するばあいで、その確率は0.5となる。
つまり、女性jと正常男子から血友病の男子が生まれる確率は、0.9×0.5×0.5=0.225 (22.5%)となる。