<付録2> 細胞質遺伝 (非メンデル性遺伝)


 いままでに学んだ遺伝は、染色体上にある遺伝子を考えることによっ て考えることができた。ここでは、核以外の要素を考えなければ説明 できない遺伝について紹介する。
  核内遺伝子以外の要因が遺伝に関与する場合が見つかり、近年研究が進んでいる。細胞質に存在す る葉緑体とミトコンドリアは独自の遺伝子DNAをもち、これらによって起きる場合と、細胞質に存在 する因子によるものがある。一般に細胞質遺伝は次の特徴をもつ。
 1) メンデル式遺伝に従わない
 2) 雌雄を入れ換えて交雑した場合結果が異なり、F1 は原則として母親の 形質を示す。
 3) 交雑の子孫において一定割合の形質分離が起こらない。
 また、最近では、ヒトのミトコンドリアが母方に由来することから、ミト コンドリアの遺伝子解析によって人類の起源をさぐる研究も行われている。

[例1]オシロイバナの葉のふ入り
 オシロイバナには、1本の株に緑色の枝、ふ入りの枝、白色の枝が別れて出ることがある 。 この場合、緑色の枝に咲いた花にどの枝からの花粉をつけても、 F1 は全部緑色となる。白色の枝に咲いた花にどの枝からの花粉をつけても、 F1 は全部白色となり、光合成ができず死んでしまう。ふ入りの枝に咲いた花 にどの枝からの花粉をつけても、 F1 にはふ入りと 全緑と全白ができる。これは、ふ入りの花にはふ入りと全緑 と全白の3種類の卵細胞が作られるからである。いずれの場合も、 卵細胞中の葉緑体によって遺伝が支配され、花粉に依存しない。


[例2]テンジクアオイの葉のふ入り
     オシロイバナと違って花粉の葉緑体も関与する。白枝の花に緑枝の花粉を つけても、緑枝の花に白枝の花粉をつけても、F1 にはふ入りのものができる。これが育つとき、ふ入り、緑、白のいずれにな るかは、その枝の成長点がふ入り、緑、白のいずれであるかで決まる。



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